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根面う蝕—むし歯だが、他にできる場所とはちょっと違う!

2024.02.07

最近、歯ぐきに茶色くむし歯ができて恰好が悪い。

歯ぐきが下がってそこにむし歯ができた!

こんにちは。安城市の神谷歯科医院院長の神谷繁彦です。

むし歯(う蝕)と言えば昔からの歯の病気です。

できやすい場所は歯のかみ合わせの溝やへこみ、歯と歯の間、歯と歯ぐきの境で、歯の汚れの多い3大不潔域と言われます。

今回は、特にこの中でも歯と歯ぐきの間にできるむし歯、特に歯肉が下がって歯の根の表面にできるむし歯についてお話ししましょう。

 

成人のむし歯で多いのが「根面う蝕」です。

根面う蝕とは、歯周病から歯の周囲に歯周ポケットができ、やがて歯ぐきが下がりはじめ歯根(しこん)が露出し、そこにできるむし歯のことです。

3大不潔域では歯と歯ぐきの境にできるむし歯です。

これは高齢者に多くみられます。

本来、歯ぐきのなかに埋まっている歯根の表面は硬いエナメル質ではなく、それより軟らかいセメント質で覆われています。

若い時には歯と歯ぐきの境はエナメル質部分しか出ていませんが、

年がたつにしたがって歯肉が下がり(生理的にも下がります)、歯根が露出するとセメント質がむき出しになります。

セメント質は石灰化度が低く、又薄いのです。

また、セメント質は柔らかく表面がザラザラしていますので、汚れが付着しやすく、又石灰化度も低いので、むし歯になりやすのです。すぐに象牙質が露出しまいます。

またむし歯への進行速度も速いのが特徴です。

また恵那メエル質がないため、表面雄脱灰が起こらないので、環境をよくしてもエナメル質のように再石灰化は起きず、自然修復はほぼ期待できません。

根面う蝕は、歯髄腔に近接した位置から脱灰(だっかい)が始まるため、進行するとすぐ歯髄に到達してしまいます。

さらに、深部に向かって進行する他に、側方へも進行することから、根面が全周にわたってう蝕に侵され、歯根が折れ歯冠がまるごと喪失してしまう場合もあります。

先ほど根面う蝕は高齢者に多いと言いましたが、若い人でも油断していると発生します。

根面う蝕は歯肉が退縮して起こりやすいので、歯周病が強く表れている人にもできやすいのです。

重度の歯周病、歯ブラシの毛先を充てる力が強すぎる、ドライマウス(加齢や服薬、放射線治療などにより唾液の分泌量が減少し、口の中が乾燥する)などでも起きやすいのです。

 

根面のむし歯(根面う蝕)が厄介な理由

1早期の発見が非常に難しい

根面う蝕は、最初期の発見が非常に困難です。

根面の象牙質はもともと黄色みがかっていて、できはじめのむし歯は色がうっすら変化する程度です。

専門家の目でも判別に苦労します。

 

2自覚症状がほとんどない

根面のむし歯には、「しみる」「痛い」といった自覚症状はほとんどありません。

口唇や歯肉で隠れる位置にできるので、鏡でも見にくく、むし歯になっていることに気づかないまま進行しているケースも多いです。

根面のむし歯は数年かけて徐々に進むこともあれば、短期間で急速に進むこともあります。どちらも場合の痛みは出にくいので派遣が遅れがちです。

 

3セルフケアが難しい

根面は歯ブラシが届きにくい場所で、前にも申し上げた通り、みがき残しが多くなりがちです。

当てているつもりでも当たっていない、ということもよくあります。

 

4治療が難しい

むし歯が進行した場合、通常細菌に侵された病変部を除去して、進行を止めてから詰め物や被せ物を入れます。

ですが、根面う蝕はそうした対応が難しいです。

特に歯ぐきの中や歯の根に深くむし歯ができている場合、むし歯部分を残らず除去しようとすると、器具が届きにくく、また歯肉を傷つけて出血が起き、詰め物が入れにくいです。

また歯ぐき周囲を取り囲むようににむし歯ができてしまった場合、歯が折れてしまう可能性が高いです。

 

5治療後も長持ちしにくい

根面のむし歯が広がっている時、歯の根の治療をして被せ物を入れるときがあります。こうした場合、

①歯周病によりあごの骨が減っている

②そのため歯ぐきより上に出ている部分が増えてバランスが悪くなっている

③根の歯質が減っている

④歯の神経が取り除かれている

などの理由でどうしても予後が悪くなります。

 

いかがでしょうか。

根面う蝕は普通のむし歯とちょっと違うところがあります。

治療法、予防などは次回にお話ししたいと思います。