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暫間補綴物―歯周病治療のためでもあり、嚙み合わせの治療のためでもある。

2023.09.18

仮の歯が入ったけれで、これで治療は終わりなの?

ずっと仮の歯が入っているけれど、でいつになったら本物の歯が入るの?

こんにちは。安城市の神谷歯科医院院長の神谷繁彦です。

今回は前回のお話の続きです。

暫間補綴装置はやむを得ず歯を削らざるを得なかった後にとりあえず形を作る、またはかみ合わせの機能を維持するために作られるものです。

これには大きく暫間被覆冠暫間義歯とに分けられ,ともに顎位を確保し咬合力を分散するのに役立ちます。

暫間被覆冠とはテンポラリークラウンとも呼ばれ、

①義歯の前処置としての支台歯の補綴症例,

②多数歯に対する固定が必要な症例,

③支台歯に側方運動のガイドを付与したい症例

などに使われます。

また暫間補綴装置の装着は,最終補綴装置を審美的・機能的に満足のいく形態とするためにの参考になります。

また、暫間義歯は抜歯した後に歯を入れてかみ合わせの高さを保ちます。また見た目の格好も揃えます。時の斬間でなく、即時義歯を使うこともあります。

いずれも他の歯科治療(歯周病治療や抜歯後の傷口が安定するまで)を行ったほうが好ましいときに使用するのです。

 

しかし暫間補綴装置はあくまで暫間です。これで治療は終わりではありません。

長期間使用していると問題が起きてきます。

長期間にわたって暫間被覆冠を装着していると,材質の劣化などにより、冠の摩耗や破折などが起こります。

またはプラークがたまりやすく、さらにセメント(加着罪)が溶けて、うむし歯の発生、脱離や破損によるかみ合わせの位置の不安定化や破損による修理・再製作などが出てくることがあります。

これは患者・歯科医師の双方にとって望ましくない状況が出ることがあります。

さらに,暫間補綴装置の強度不足によって,歯周病の治療に支障が出ることがあるのです。

多数歯に対する固定を行うときでも、一定期間安定した咬合を得るためには,斬間のレジンではなく金属かセラミック、硬質レジンなどの耐摩耗性の高い最終補綴物の材料の使用が求められるのです。

よって、できるだけ早く最終補綴装置を装着して咬合の確保を得ることが好ましいと言えるでしょう。

 

歯周病患者における早期補綴をおこなうことは,主には咬合性外傷のコントロール(残ってている歯に負担をかけすぎない)によって歯周治療を効果的に進めることを目指しているのです。

患者の希望に沿ってのみ行われるわけではありません。

また、咬合性外傷の関与が強く疑われる歯周病患者においては、治療の選択肢の一つとして早期補綴治療も視野に入れなければいけません。そのためにも暫間補綴物を入れるのです。

誤解するのはこれで治療が終わりと思い込んでしまうことです。

ちっとも補綴物が入らないのはこちらがさぼっているからと誤解する方もおられるようですが、決してそうではありません。

 

再度補綴の立場に立って説明します。

1補綴歯科治療時期の原則:

① 歯周病患者における補綴歯科治療については,歯周組織検査に基づき治療計画が立てられていること。

② 歯周基本治療後の再評価が行われ,必要に応じて歯周外科治療が終了していること。

③ その後の再評価の結果により,歯周組織の治癒が得られ,補綴歯科治療に移行してよいと判断した場合に

行うこと

2 治療用装置の装着時期の条件

歯周病に対する長期の治療期間が予想される患者に対して,かみ合わせの回復および残存歯への咬合負担軽減、審美的改善(見栄えをよくする)、さらには自分でしっかりお口の中をきれいにしやすくするのをを目的とする,「歯周治療用装置」が歯周治療中に必要でしょう。

歯周治療用装置の時期については,以下の項目を条件とすべきでしょう。

①歯周組織検査に基づき治療計画がしっかり立てられていること。

② まずは一回目の歯周組織検査とお口全体のスケーリング(歯石除去、クリーニング)が終了していること。

3 早期補綴治療の時期の条件

治療期間が長期化する症例では,歯周治療用装置での機能回復,咬合力の負担軽減,見た目でのお口の格好の改善が不十分で、さらには歯の動揺や形態等がセルフケアの支障となる場合も多々あります。

この場合,通常歯周病治療が終了した後に行うべき補綴歯科治療(クラウン,ブリッジ,義歯など)を、早めに治療することも有効です。

その条件は以下の通りです。

①歯周組織検査に基づき治療計画が立っていること。

②1 回目の歯周組織検査と全顎のスケーリングが終了していること。

③その後の 2 回目の歯周組織検査が終了していること。

④ 2,3 回目の歯周組織検査において,プラークおよび炎症のコントロールができていること。全体として歯肉の炎症が改善されていること

⑤ 支台歯に対して,スケーリング・ルートプレーニングと 3 回目の歯周組織検査が終了して,歯周組織の炎

症のコントロールができていること。

⑥ 検査結果から,早期補綴治療が望ましい理由を明記すること。

⑦ 早期補綴治療後の歯周治療の継続について患者から同意を得て,実施すること。(歯を長く持たせるためには重要です!)

 

いかがでしょう。

今回はお話が長くてややこしかったかもしれませんが長期間治療に通っておられる患者さんにとっては重要なことかと思います。

疑問がありましたら自己判断せずに歯科医院でご相談ください。